TAP2019 DemoDay Report
東急アクセラレートプログラム2019 Demo Dayを開催!!

2020年4月13日

「スタートアップと共にワクワクする街づくりを」というコンセプトで開催している東急アクセラレートプログラム(以下「TAP」)。第5期である2019年度の総括となるDemo Dayを2020年3月に開催しました。

TAPの目標のひとつは、東急線沿線をスタートアップが事業展開しやすくすることです。そのためTAPは、スタートアップと東急グループとが共同で社会実装を実現し、必要に応じて業務提携や出資等を検討していくプログラムとなっています。

TAPには現在東急グループ26事業者が参画し、17の対象事業領域で事業共創を検討中です。過年度の受賞企業とはすでにPoCを約30件、業務提携・資本提携を6件、累計十数億円の出資を実行するに至りました。

今回のDemo Dayでは4名の外部審査員を含む7名がスタートアップ及び事業案を審査。「新規性」「成長性」「親和性」「実現可能性」という観点から定量評価を行い、定性的な観点を加えて総合的に審査を実施しました。

【審査員】
(外部審査員)
・グローバルIoTテクノロジーベンチャーズ株式会社 代表取締役社長 安達 俊久 氏
・デロイトトーマツベンチャーサポート株式会社 代表取締役社長 斎藤 祐馬 氏
・SBIインベストメント株式会社 CVC事業部長 加藤 由紀子 氏
・Spiral Capital  シニアアソシエイト 立石 美帆 氏

(当社審査員)
・東急株式会社 取締役社長  髙橋 和夫 (審査員長)
・東急株式会社 執行役員渋谷開発事業部長 東浦 亮典
・東急株式会社 執行役員沿線生活創造事業部長 金井 美惠

▲ 審査員は今回、オンラインで参加しました。


Demo Dayでピッチをしていただいたスタートアップは以下の6社です。順に紹介していきます。
各ピッチ動画はこちらからご覧ください。

https://tokyu-ap.com/demoday2019.html

● 家具のサブスク | subsclife
株式会社 subsclife 代表取締役社長 町野 健 氏

最優秀賞にあたる東急賞(賞金1,090,000円)に輝いたのは、家具等をサブスクで提供するsubsclifeです。

subsclifeは家具や家電をサブスクリプション形式で、法人や個人に提供するサービス。例えば引っ越しするときに、家具を一気に揃えたら初期費用がかなりかかってしまいますね。しかしサブスクリプションなら支払いが安定します。その効果を狙ってか、subsclifeのユーザー企業には中小企業やスタートアップはもちろん、大手企業の新しいプロジェクト等が開始する際の利用が伸びているそうです。

subsclifeのポイントはまず、アイテムの圧倒的な取扱数。2020年3月現在でユーザーは、400ブランド、10万種類の家具等を選べます。内装家具のコーディネートやメンテナンス、細かい支払い方法にも対応していたり、回収したアイテムは再利用して、家具等が無駄に廃棄されないシステムになっている点も魅力です。

subsclifeと共創している東急グループは2社。まず商業施設を展開する東急モールズデベロップメントでは、テナント様へsubsclifeの家具等をご案内します。従来テナント様は入居時の内装設計や退去時の家具撤去に、相当の時間と手間をかけていましたが、subsclifeを導入することでこの負担を軽減していく考えです。

またSHIBUYA109エンタテイメントとは今後、若年層のインテリアに関するニーズを調査し、嗜好に応じたインテリアコーディネートをsubsclifeと共同で提供していきます。

▲ 東急モールズデベロップメントの篠﨑正暉(左)とsucbclifeの町野氏

● 5G時代のエンタメ体験|SPWN
バルス株式会社 代表取締役/CEO 林 範和 氏

▲ スライド上に林氏と同じポーズをとるキャラクターがいますが、これはSPWNの仕組みを使い、林氏の動きをトレースして実現しています。

続いて渋谷賞(賞金428,000円)に選ばれたのは、XRを使ったエンタテインメント「SPWN(スポーン)」を提供するバルス。SPWNはバーチャル3D空間上のエンターテイメントスペースです。

近年5Gの導入が社会的に進んでいます。5Gの普及が進めば世界中のつながりがより濃くなることでしょう。さらに機械学習の利用により、ARやVRといった新しい次世代のメディアで簡単にライブを行えるようになっていきます。そのプラットフォームとなるのがSPWNです。

SPWNを使えばライブの配信や、チケットやグッズの購入が簡単にできるようになります。今までは誰がどんなグッズを購入したのかの把握は困難でしたが、SPWN上でグッズを購入すればそのトレースも容易です。

今後はバーチャルキャラクターのライブに加え、通常のライブビューイングも手掛けていきます。現在のライブビューイングは専用の回線や機材が必要で固定費が高いのがネックでしたが、SPWNを使えば一般回線でPC1台からでも配信できるようになる見込みです。

すでに東急レクリエーションが運営する109シネマズの一部では、SPWNを使ったバーチャルアーティストのライブビューイングを実施。VTuberの双方向ライブとして実績が出ています。この結果を踏まえて全国の109シネマズへの展開を決定。今後はXRライブコンテンツの共同制作も実施していく予定です。

▲ 東急レクリエーション 小俣 明徳(左)と、バルスの林氏

● シェアリング電動キックボード|Luup
株式会社 Luup 代表取締役社長 岡井 大輝 氏

電動キックボードをはじめとする、電動マイクロモビリティのシェアリングサービスを手掛けるLuupは二子玉川賞(賞金250,000円)でした。

キックボードのみのシェアリングサービスを手掛ける企業は世界中にみられますが、Luupは「高齢者も若者も外国人も乗れる電動の小型モビリティのインフラを作る」をミッションに掲げ、幅広い層を利用者として想定している点が他社とは異なる点です。

電動キックボードのシェアリングを日本で実現するためにはいくつかの課題があると、代表の岡井氏は語ります。その中の1つは規制の適正化です。先進国ではほとんどの国で昨年末までに適法となっていますが、日本の対応はまだこれからです。また、電動キックボードは日本にとって新しい乗り物です。人々に受け入れられ、安全・快適に乗っていただくことができるかどうかをしっかりと確認する必要があります。そのためLuupは、1年間で全国25か所以上の街で実証実験を行ってきました。

Luupは既にリゾートホテル、大学、工場内等法人との実験を進めてきましたが、東急電鉄とは一般ユーザー向けのテストの準備をしています。将来的には、現在東急がベトナムで進めているスマートシティにもLuupを展開予定です。

▲ 東急電鉄の中村 文香(左)と、Luupの岡井氏

● スマホでアクセサリーが作れるモノづくりマーケット|monomy
株式会社 FUN UP 代表取締役/CEO 山口 絵里 氏

SOIL賞(賞金100,000円)1社目はmonomyを運営するFUN UP。monomyは誰でもスマートフォン上で簡単にオリジナルのブランドアクセサリーが作れて販売できるモノづくりマーケットです。

モノづくりの製造販売の工程は、100年以上大きく変化していません。企画からサンプル製作など、とにかく工程が複雑で関わる業者が多いうえに、大量のロット発注が必要なため、どうしてもメーカーは在庫リスクを抱えなくてはなりません。

そこでmonomyは、バーチャルで作れるデザインアプリを消費者に展開しました。ユーザーがデザインした商品が売れたら、monomyが代行して製造・検品・梱包・発送といった面倒な工程を代行します。つまりユーザーはアクセサリーを楽しくデザインしてアプリに投稿するだけで、オリジナルのアクセサリーをD2Cブランドとして販売できるのです。

monomyはインフルエンサー等のD2Cブランド立ち上げを支援してきました。半年で70ものアクセサリーブランドを立ち上げています。またmonomyは今後、アクセサリーだけでなく靴や家具などへの横展開も実現していくとのことです。

今回monomyはTAPを通して、東急百貨店が運営する渋谷ヒカリエ ShinQsにてオンラインとオフラインを繋げるOMO施策を実施します。monomyはオンラインが起点のサービスですが、オフラインの店舗とつながることで、モノの良さを体験したり、身につけてみたりといった体験を提供できるようにしていくのです。

具体的には、サステナブル素材パーツを使ったアイテムを、店頭からカスタムオーダーで製作できる購入体験の提供や、渋谷ヒカリエ ShinQsを利用するユーザー層から支持を得ているインフルエンサーのD2Cブランドのリアル店舗化等の施策を計画中です。店舗としてもmonomyのアプリでオーダーを受けることにより、在庫を持たなくてよくなるといった効果が期待できます。

▲ 東急百貨店の小林 洋介(左)と、FUN UPの山口氏

● オンラインでの上質な接客を提供|SELF LINK
SELF 株式会社 CSO 村上 雄佑 氏

SOIL賞2社目はセールスオートメーションシステム「SELF LINK」を提供するSELFです。

東急百貨店でもネットショップを開設していますが、満足いく商品をすぐに見つけられる店頭と相当の接客という意味ではまだまだ課題が残っています。

SELF LINKは、ユーザーとAIがサイト上で会話することにより"ユーザーをより深く理解する技術"だけでなく、"商品要素を理解し解析する技術"を組み合わせることで、実店舗の販売員による対話接客をオンラインショップ上で実現するサービスです。SELFがこれまで開発してきた高度なコミュニケーションAIを、オンラインショップ用に特化させユーザービリティを高めたものがSELF LINKです。

チャットボットツールは世にたくさんありますが、それらは1人1人のユーザー行動を把握したり特徴付けたりはせず、ユーザーから受けた質問に、機械的に一問一答で回答するものが多いように見受けられます。他方でSELFのコミュニケーションAIの場合は、ユーザーの特徴を個別に把握して回答を変えていくという特長があります。

今回のTAPとの事業共創では、東急百貨店ならではの上質な対話接客とSELFの対話の自動化技術を組み合わせることで、オンラインショップ上で実店舗のような接客の実現に取り組みます。具体的には① 売り場であるサイト内の的確な案内 ② 会話による接客、お声がけ、ヒアリング、商品提案 ③意外性の提案 を実現しています。これによりオンラインショップでの購買率を増加させていきます。

▲ 東急百貨店の橋本 崇顕(左)と、SELFの村上氏

● ホテルやコインパーキングの値決めをAIで|MagicPrice
株式会社空 執行役員 新規事業開発担当 和泉 ちひろ 氏

最後のSOIL賞は「Price Tech」を掲げる空です。

空がメインビジネスとして手掛けてきたのは、ホテル向けプライシングSaaS「MagicPrice」。ホテルの料金はいつも一律ではありませんが、値決めは熟練ホテルスタッフの勘と経験で決まっていると言われていました。しかしMagic Priceを導入すれば、料金設定を自動で決めてくれて、誰でもプライシングができるようになり、業務効率が上がるというわけです。ホテル側としては最適な価格を提示することにより、機会損失を減らして売上向上が見込めます。東急ホテルズでは本プログラムの前から既にMagic priceを導入してきました。

そんな空はホテルの次に、コインパーキングへ事業領域を広げようとしています。今回のTAPでは空と、コインパーキングを手掛ける東急ライフィアがタッグを組みました。コインパーキングの値決めをMagicPriceの仕組みを使って実現させようというのです。

空のサービスは東急の他のサービスとも連携できる可能性があります。今回のPoCの結果次第では、他の領域への展開も検討できるかもしれません。

▲ 東急ライフィアの 佐伯 知彦(左)と、空の和泉氏

TAPではスタートアップからの応募を24時間365日受付中!

subsclifeの東急賞受賞で幕を閉じた今回のDemo Day。しかしながらTAPの目標はあくまでスタートアップと東急両社による「社会実装」です。TAPはそのためのPoCを今後も推進していきます。続報をお待ち下さい。

またTAPでは、他のアクセレートプログラムとは異なり、随時スタートアップからのエントリーを受け付けています。対象はポストシード以降、つまりプロダクトがローンチされている又はローンチの目途がついている企業から上場企業までもが対象です。2019年度から審査期間を従来の約1ヶ月から、最短2週間に短縮し、よりスピーディなプログラム運営を行っています。。また今回の2019年度までは既存事業との事業共創を前提に各社との検討を進めてきましたが、2020年度からは東急にとっての新規領域も対象とする予定です。詳細はこちらを御覧ください。皆様からのご応募を、お待ちしております。

https://tokyu-ap.com/#program

text: pilot boat 納富 隼平